エキソニモ UN-DEAD-LINK アン・デッド・リンク

展覧会入口、巨大ポスターボード、エキソニモという文字がグラフィカルに配置

[インターネットアートへの再接続]

@東京都写真美術館

こんにちは、matsumoto takuya です。今回は東京都写真美術館で開催中の「エキソニモ UN-DEAD-LINK アン・デッド・リンク」 展をとりあげます。

エキソニモ(exonemo)は、千房けん輔と赤岩やえによる日本のアート・ユニットで、1996年からインターネットそのものを駆使したアートである「net-art」(インターネット・アート)作品を発表し、こんにちは「net-art」(インターネット・アート)の枠にとどまらない活躍をしている冒険心あふれるアート・ユニットです。

公式ホームページのインタビューによると、当展覧会の展示内容は企画段階のものとは大きく変わったそうで、ちょうど企画準備段階でコロナウイルスの感染問題が浮上してきた時だったそうです。避けられずネット中心の交流が生活の中心になる中で、すでに当たり前になったネット生活環境に対する関心が改めて高まっていることをエキソニモは敏感に感じ、もう一度「net art」((インターネット・アート)という表現方法に可能性を見出し、自作のインターネットアートを振り返る方向になったそうです。今回の展覧会のタイトルである「デッド・リンク」とはネットでリンクが切れて、誰からもアクセスされず、埋もれてしまったウェブ情報のこといいます。そこに再びリンクさせようという試みからこのタイトルになったそうです。(当展覧会の解説より 詳しくは元ネタの東京都写真美術館公式サイトのエキソニモへのインタビューをご参照ください)

エキソニモ UN-DEAD-LINK アン・デッド・リンク公式サイト

展示空間はどこかおしゃれで、ポップアートのようなビビットな色調とテクノロジーの持つ知的な雰囲気が漂っていて「今っぽく未知」なるもの満載の空間が広がっていました。とにかく、なんか賢そうでカラフルで、新しそうなで、終始冒険心をくすぐられている気分になりました。まだ小さかった頃、はじめて、都心にひとりで出かけて行った時のような感覚ともいえるかもしれません。

展示室風景
展示室風景

この展覧会はたしかに面白かった。この展覧会は現代アートの中でメディアアートという位置づけがなされているようです。

それにしても、アートとはここまですそ野がひろいものかと驚かされます。実験的な創造性はアートの中で重要な要素ですが、その実験性に照準をギュッと狭めた印象を受けました。そこには古典的な表現様式に比べ「美」は少ないですが、試行錯誤や創造性に特化しているので、現在のもつダイナミズムや意外性と出会えます。

とはいったものの、私はついさっきまで少し煮えらない気持ちを抱いていたことは認めます。アートのもつ「美」よりも「面白さ」が重視される傾向は、ただ目立てばいいのかといった思いや、見る側の解説への「理解」を前提にしている点で、単一的で閉鎖的な窮屈さを感じていたからです。

しかし、今さっきイタリア写真家の巨匠ルイジ・ギッリがその狭い見方を広げてくれたのでした。

―――今日、どんな写真、音楽、ビデオクリップ、映画、広告、文学、映像、芸術作品、つまり絵画や彫刻作品も、他の表現言語と相互作用を断ち切ることはできません。どうゆうことかというと、芸術家あるいは製作者は、自覚の差こそこあれ、必ず他の表現言語から影響を受けるということです。他のメディアと一切関係を持たず、特定の歴史のなかにとどまる作品を考え出すのは、今日ではもはや不可能なのです。

ルイジ・ギッリ:『写真抗議』萱野有美訳:株式会社 みすず書房

わたしが偏狭でした。

以下、展示内容を一部含みます

なぜ、アメリカのアートはとても主張性が強いストレートな表現が好まれるのか

彼らは活動拠点を日本からアメリカのニューヨークへ変えます。すると彼らの表現が、アメリカチックな直接的なものに変化していることに気が付きました。

展示no.16『I randomly love you/hate you』という作品はそれが分かりやすく、この作品はメッセージアプリ上で”I 〇〇 loev you “(愛してる)/I hate you(憎んでいる)という会話が2者間で繰り返される作品です。日本人の感覚では、「愛してる」はありだとしても「憎んでいる」という強い感情表現はあまり受け入れられていません。

なぜこんなアメリカチックになったんだろうという疑問の答えは公式HPのいエキソニモへのインタビューの中にありました。

彼らは、英語圏で芸術表現をするにあたり、ある壁の存在に気が付いたそうです。それは、日本や欧州でで評価されることできたニュアンスといった部分がニューヨークでは気が付かれないということです。彼らによると、アメリカは人種が多様であるので、直球でないと表現の意図に気が付いてもらえないからだそうです

ニュアンスの面白さを楽しむことができないという点は、いいかえればニュアンスでごまかすことができなくなったともいえ、作品そのもののの本質が求められるということです。なるほどな、と納得すると同時に彼らの真剣さがひしひし伝わるエピソードでした。わたしはこういう真剣さがわりと好きです。

自分の価値観を広げてくれるおこしろい展覧会でした。以上、エキソニモという前衛現代アーティスト展の特集でした。お付き合いありがとうございました。

展示『UN DEAD LINK 2020』風景
展示no.19『UN DEAD LINK 2020』風景

参考:東京社品美術館インターネット会場 エキソニモインタビュー

「エキソニモ UN-DEAD-LINK アン・デッド・リンク」 展

[会場]東京都写真美術館

[期間]2020/8/18(火)~10/11(日)

[開館時間]10:00~18:00

[主催]公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都写真美術館、日本経済新聞

[助成]令和二年度文化庁メディア芸術アーカイブ推進支援事業

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