『もつれるものたち』展

Things Entangling

@東京現代美術館

こんにちは、matsumoto takuya です。今回は東京現代美術館で開催されている「もつれるものたち Things Entangling」展をとりあげます・

この展覧会では、現代アートの中でもとりわけメッセージ性が込められているアート作品がキュレートされています。アーティストはアートの領域だけで暮らしているわけではなく、わたしたちと同じようにとモラルの領域や政治の領域、経済の領域に関わって暮らしています。アート以外の領域で感じたもの、大事にしたいもの、大事にしたいもの、そんなものを伝えていきたいという想いが「もつれ」ながら作品のなかに込められている。展示されているアートからは「もつれるもの」たちの存在がうっすらと、ものによっては、はっきりと感じ取れました

『もつれるものたち』展公式サイト

わたしは、美術館にいって啓蒙の存在を感じ取るともやっとします。今回は、社会派チックなアートと対面した時のもやもやは何なんだろうということを書いていきます。

アーティストの「啓蒙活動」の難しさ

アートは社会に発信してはじめて認知されますので、活動がともないます。そして活動は、社会に何らかの働きかけをすることです。これは、政治の領域と重複してきます。

わたしは社会的な問題について「アート」を手段として社会にコミットしようすることは、アーティストとしてある程度のリスクを引き受けることだと思っています。それは、政治のシステムに引きこまれる点です。アートがどこか説得を目的とした道具となってしまう点です。

わたしは美術館に行くとよく穏やかな気分になります。いろいろな理由があるとおもいますが。一つは、アートの要素の一つが無目的だからだと思っています。「~すべきだ」とか「~のために」だとか「意義がある」とかいったものを一旦忘れられる。自分が日常生活で知らず知らずにかけている自責が弱まるんですね。

そのため、アートを見に来いって、「~すべき」「~のため」といった、正義やそれを証明するかのような理屈や誘導をアートのなかに直接的に感じとってしまうと、「美術館にきてもおな、、、」と余計にうんざりしてしまうのです。

芸術家・岡本太郎はこんなことを言っています。

”計算を超えた、無目的の戦い、あらゆる対象への無条件の挑戦を続けること、が人間手的であり、生きがいだ。そこに芸術がある。しかし、いまは芸術までが政治や経済と同じようにシステム化され惰性的に流されている。そこにぼくは憤りを感じているんだ。”

岡本太郎『孤独が君を強くする』株式会社興陽館 

これは、アートの作品自体についてのことをさしてしるのでしょうが、『計算を超えた、無目的』という部分は芸術の核心をついているようにおもいます。

かといって、全てのその手の作品にそういった感想を持つわけではないのです。今回の展示ではトム・ニコルソンとジュマナ・マナの作品はからはそういう点は気になりませんでした。そこには、何かしらの配慮がなされているように思うのです。

アートと社会的活動と隠喩

トム・ニコルソンの『相対的なモニュメント(シェラル)』(2014-2017)

このアート作品、古典的な美しいモザイク画にも彼の思想などの「もつれるもの」が込められています。しかし、そのメッセージが作品に直接的に表現されていない。彼の思いや展望は、美しいモザイク画という形態に一度返還され、隠喩のような形で込められていると考えられます。

気持ちや思想を作品の型に転換して隠喩にして作品に込める。あとは観た人が興味がもってその問題にコミットするかは見る側に委ねる。これがアーティストがアートを手段として社会活動をする場合の極意なのかもしれません。でないと、社会学的な感じになってしまう、見る側はお勉強的な受け身をしいられてしまう。

それ自体がアートとして成り立っているか

ジュマナ・マナの作品も、もやもやなく彼女の世界観を味わえました。生き物のような生々しさをもちながらシンプルで幾何学的な家具のような作品はとても不思議な作品です。正直なところ作品を見ただけでは、彼女が言いたいことは全く分かりませんでした。それでも、彼女の作品自体が独立して、芸術特有の引力みたいなものを備えているのは感じ取れました。その「引力」に引っ張られるように、何だこれはとついつい解説を読んで、はじめて彼女が作品に込めた「もつれるもの」の存在を知っていったのです。

このプロセスで、彼女はすくなくともわたしには、彼女の考えを伝えることを達成しているし、わたしのほうも抵抗なくいられました。

普通に考えてわざわざ思想を作品に隠喩にして込め、作品そのものを芸術レベルまで高めたうえで、どう受け取り、どう行動するかは見る側に委ねるなんて、効率が悪いという人がいるかもしれません。しかし、それはもはや芸術をするものではなくて、活動家であり政治家です。

直接的に訴えたほうが早いかもしれませんが、この方法は鑑賞者側の主体を尊重しているように私には思えるのでした

以上、おつきあいありがとうございました。

「もつれるものたち」展

[会場]東京都現代美術館 企画展示室 1F主催

[会期]2020年6月9日(火)- 9月27日(日)

[主催]公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館、カディスト・アート・ファウンデーション

[助成]公益信託タカシマヤ文化基金、アーツ・カウンシル・コリア、アンティチュ・フランセ パリ本部、在日オーストラリア大使館

[協力]日本航空
[特別協力]福島県双葉町教育委員会

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