Updated on 1月 9, 2021
メルセデス・ベンツ・アートスコープ2018-2020
目次
MERCEDES-BENZ ART SCOPE
@原美術館
こんにちは、 matsumoto takuya です。今回は、北品川にある原美術館で開催されている「メルセデス・ベンツ・アートスコープ2018-2020」展をとりあげます。
「メルセデス・ベンツ・アートスコープ2018-2020」展公式サイト
この展覧会は、メルセデス・ベンツ日本による、日本とドイツの間の文化交流を図る文化・芸術支援活動です。原美術館は展覧会の形でその発表の場を提供するパートナー関係にあるようです。
率直な感想からいうと、ふり幅がとても広い展覧で新しいことへの挑戦的な表現に重きを置いているような雰囲気でした。佇むアートから刺激的なアートまで、とても広範囲の内容の展示が凝縮されている、そんな感じです。
以下、内容を含みます
キャッバスからこぼれる温かさ
わたしは展覧会はさまざまで、必ずしもいいな、と思える作品と出会えるわけではなく、そこがまた出会いの面白さを深めてくれる醍醐味だと思うようにしています。
このような前振りを書いておいてなんですが、「resume」久門剛史2020年というインタラクションは、「出会い」でした。
真白な空間の床にキャンバスが裏にして壁にそって立てかけられています。これが不思議なことに、何とも控えめでささやかで、温かい色彩を優しく放っているのです。そう想像したのではなくて可視できるのです。「優しく放っている」こういう表現にピンとこない方がいらっしゃるかもしれないですが、百聞は一見にしかずということわざにもあるように、この不思議は是非自分の目でみるのが良いと思います。
このインタラクションは、すっと心が落ち着く上に、その空間に長く落ち着けられる癒しがあるような気がしました。絵画の名作はずっと長時間の鑑賞に堪えられるそうですが、この作品は長時間その場にいられるタイプのもののように感じられたのです。
このインタラクションのメインオブジェクトに対面した時、「おや」っと思った部分がありました。
わたしは、内装工の仕事を手伝っていたからわかるのですが、まるでクロスを張る前の下地処理した壁面が利用されているのです。壁紙(クロス)を張る前に、ボードの隙間やビスの穴があり、張った後の見栄えに影響するため、石膏(パテ)をへらで埋めてやすりで平面を作ります。この下地処理した状態の壁面の一部が作品の構成材料にに使われていたのです。
わたしは依然下地処理した壁面を現場で見たときに、佐倉のDIC記念美術館が所有するロスコ(抽象画家)の扉の抽象画を連想したことがあります。淡い色のボードに幅をもったス薄黄色い石膏がとても幾何学てきな直線で巨大な壁面に塗り付けられている光景に、どこか魔力のようなものを感じたものでした。
なので、「ああ、わたしと同じ感覚をもった人がここにいた」と親近感みたいなものを感じたのを覚えています。
この作品は自然光に依存しており、天候や時間で作品が変化していくようでした。わたしは、日さす時間に入館し夕暮れ時に退館したのですが、表情が全く異なることに驚かされました。
まさに過激な非日常
光とオーディオを用いたインタラクション、「抗夢」小泉明朗#1(彫刻のある部屋)は、久門剛史「resume」とは対極の表現だと感じました。暗示的なオーディオが頭のなかで漂いながら光の派手な動きがそのオーディオかき消そうとするような感じでした。日常をゆさぶるようなインタラクション。とにかく不思議、奇天烈、予想外。刺激にうえている人にはおすすめです。世にも奇妙な経験をができるかもしれません。
建物がとっても魅力的
原美術館は、”東京国立博物館の現・本館(上野公園)や和光ビル(旧服部時計店・銀座)を手がけた渡辺仁”によって設計されたもので、、1930年代の洋風館の代表建築物だそうです。(Hara Musiun Web:美術館んについてより参照
面白いつくりをしていて、バウハウスの影響を受けているように感じました。(現在東京ステーションギャラリーで「開校100周年 気たれ、バウハウス」が開催されています。この展覧会の記事も書いておりますので、気になる方はこちらへどうぞ)
展三階の展示室に通じる階段は味わい深く、ホワイトベースの壁には補修のためのパテ処理がなされていてそれがむき出しのままになっているのですが、それがかわいい窓から入る光にやさしく照らされているのがノスタルジックで素敵でした。いい建物や庭園は時代が立つと味が出るのだとよく思います。とくに夕暮れ時の西日に楠の木の影が照らしだされ、タイル張りの側面に移っているさまはとても情緒的で美しかったです。
以上、おつきあいありがとうございました。
「メルセデス・ベンツ・アートスコープ2018-2020」
[会期]2020・7・23(木)~9・6(日)
[主催]原美術館、メルセデス・ベンツ日本株式会社
[後援]ドイツ連邦共和国大使館
[協力]ホルベイン画材株式会社
[企画協力]レジデンス・プログラム:NPO法人アーツイニシアティブトウキョウ[AIT/エイト]