バンクシー展 

オリジナルイラスト

天才か反逆者か

@ASOBUILD

こんにちは、matsumo takuya です。今回は横浜にあるアソビルで開催中「バンクシー展 天才か反逆者か」展についてとりあげていきます。

なお、今回の展覧会は、

※本展は謎に包まれたアーティスト「BANKSY」によってオーソライズやキュレーションされた展覧会ではなく、コレクターのコレクションが集結する世界巡回展です。

バンクシー展公式サイトより引用:

だそうです。世界巡回展なるものに初めて足を踏み入れました。

「バンクシー展 天才か反逆者か」展公式サイト

抜け感ただよう躍動的な空間

バンクシー展の感想を言うとしたらこの見出しだと思います。とにかく、躍動的で、いい意味で抜け感があり、動きが感じられる。時間的に静的な美術の展覧会で、ここまで動的な印象は珍しいと思います。インスタレーションをメインにする展覧会でも躍動的な展覧会はあると思いますが、どこか「芸術」というかしこまった真面目さがあるのは否めません。しかし、この展覧会はそんな雰囲気ではないのです。どこか危うげだけど自由でわくわくするそんなストリート感に満たされていました。バンクシーがストリートを活動のメインの舞台とし、活動の内容に公共物へ軽微な棄損を内包しているからでしょうか。ストリートの趣が漂っていました。会場がアソビル(ASOBILD)なのもしっくりきます。横浜のもつラフエッジな魅力や港町の開かれたイメージとがぴったりはまっているなと感じたのです。

バンクシー展展覧会風景

アートとアクティビティー

バンクシーはストリートの壁に絵を描く活動をして世界で注目をあつめているアーティストです。また、彼はイギリスを活動拠点にしている以外ほとんど素性がつかめない謎のアーティストでもあります。そのうえ、多くのストリートを舞台にした活動は無許可で行なうので、賛否両論の評価をされています。この展覧会のサブタイトル「天才か反逆者か」はそのような経緯から決められたのでしょう。

この展覧会では、そのミステリアスなアーティスト、バンクシーとは一体何者なのか?その謎をストリートから公式な展示会に至るまで彼の作品を見ながら探っていけるような配置がなされていました。。。

公共物を軽微とはいえ犯している彼がなぜ、活動し続けられているのか。彼の絵にはいったいどういった意味があるのか、もしあるとすれば彼はいったい何がいいたいのか、といった謎をにせまる探っていくことは面白かったです。

最近は、「わからない、答えがすぐ得られないもの」についての評判がよろしくありませんが、「わからない」からこそ人や物事に面白さが出てくるものなんだなと実感させられます。

それと同時に、経済的に無力な絵画や芸術表現のが潜在的に持つ力や可能性といったものが彼の活動内容や作品をとおして見えてきます。

左:BANKSY:LOVE IS IN THE AIR、中央:BANKSY:GANGSTAR RAT、右:BANKSY:GREEN REEPER

壁にかかれたバンクシーのメッセージ

この展覧会では、バンクシーの絵が、警察機構、物資主義や戦争といったカテゴリーに分けて展示がなされています。この、カテゴリーに沿う形で、バンクシーが彼の公式ホームページ等でしてきた発言を原文のまま壁に刻み込む演出がなされています。原文そのままで、訳文はありません。

一見、不親切なようですが、私はそうは思いませんでした。むしろ、日本語で翻訳をそえてしまうと、なんか嘘っぽいくなってしまったり、逆に説教くさくなったりしてしまうからです。加えて、彼が選ぶ言葉は平易な言葉が選ばれています。今の時代スマホで翻訳しようと思えばすぐできます。自分で、完璧でなくても訳してみる、というのが謎をといていくわくわく感を膨らませバンクシー展をより味わえるのではないかと思います。

めんどくさいし、時間がかかってコスパは悪いでしょうが、面白い、楽しい、冒険はコスパの外にありますし、ぜひ自分で彼のメッセージから謎のつつまれたアーティストバンクシーの姿を探っていくことをお勧めです。

彼のメッセージを読むと、彼の派手な活動には移りにくい知的な謙虚さをもった冷静さや活動の真意などが分かってきます。より展覧会を味わえることは間違いなかったです。

展覧会風景

※ここからは、個別作品についてです。ネタバレを含みます。

バンクシーは「天才」か「反逆者」か?

上述したとおり、この展覧会の副題には「天才か反逆者」という副題つけられており、公式サイトでは投票ができるます。はたしてかれは「天才」なんでしょうか?はたまた「反逆者」なんでしょうか?わたしの解答は、

「彼は「天才」であり「反逆者」ではない、しかしVANDAL(「反逆者」の訳前の言葉)だ。」

です。その理由を少し掘り下げます。

彼のどのような側面を天才ととるか

まずは、「天才」かどうかについて。わたしは今回の展覧会で彼の作品と言葉を一通りながめて、彼は芸術家であると同時に、社会の問題提起し変革を促す活動家であるということにきづきました。彼の才能についてはこの二つに分けて考えるのが妥当です。何故ならこの二つは毛並みが異なるからです。

彼はめちゃくちゃ絵がうまい

展示作品を見ていると、多くは路上にそっと書かれた「落書き」で、多くは風刺画であり、ともすると簡単に描けそうな印象を受ける軽いタッチで描かれています。そして、彼の描く絵には、タイムリーな物語性がありおもしろい。一方で絵画そのものとしてはどうかなんだ、といった疑問がわくかもしれません。

わたしは、彼の作品は絵そのものでも十分面白いものだと思います。彼の技術においては、さまざま古典の絵画をユーモアをもってパロディーできている時点で、わたしがとやかくいえるものではありません。フィメールのパロディーを民家の二階付近の壁?にあれほどのクオリティーを短時間で描けるでしょうか?ただ、かれが描く少年や少女の豊かな表情をみて、話題性がなくてもいい絵だなと思ったのです

またわたしは彼の色彩のセンスが好きです。特にモノトーンのなかに原色の明るい色を置くセンスはとんでもないなと驚かされます。最低限の着色で絵が生き生きする様は赤い傘の少女の絵だけでなく彼の表現に通じているものだと思います。どこか、伝説の写真家ソール・ライターの赤い傘の写真を思い出させます。

バンクシーは「反逆者」ではない、しかし「VANDAL」だ

ではもう一つの選択肢である「反逆者」かどうかについて。

彼は、「反逆者」なのだろうか?わたしは、疑問をもちます。彼はたしかに、意図して公共物に落書きをしているので、迷惑行為に該当します。だからといって社会全体を攻撃し壊すことは、していないし、また彼自身も望んでいません。かれは、過去に警察機構についてした発言でこんな言葉を残しています。

‘some people become cops because they want to make the world a better place,

some people become VANDALS because they want to make the world a better looking place’

(以下わたしの意訳です)

”世界をましなところにしたくて警察になる人もいれば、世界をより美しいところにしたくてVANDALになる人もいる”

BANKSY:バンクシー展より引用

ここからわかるように、かれは社会への反逆者でななくて「ヴァンダル(VANDAL)な人」なのです。今回この「VANDAL]の翻訳として「反逆者」が当てがわれているのですが。本来の意味は「反逆者」よりもっと規模も内容も個別的で「公共物を故意に傷つける人」という意味です。イベント開催する側としては、ゴロがいいとか、展覧会を盛り上げなければならない、といった事情があるので仕方ないのでしょうが、少し乱暴な訳だと思います。

ではこのヴァンダルが許される線引きはどこにあるのでしょうか。これは社会情勢やその国の法律や地域の住民の国民性や価値観と関り、常に移動しているものであろうとおもいます。この曖昧模糊とした一線を超えてしまえば、彼はただの「反逆者」でしかないし、かれが愛し手段としている芸術をも辱めますし、彼の活動は無理解のまま無視されていたでしょう。

しかし、実際彼はその手段については賛否両論を巻き起こしていますが、手段とは相反する人道的要素をもった思想に多くの人々が共感しています。中には自分の家に有料で「落書き」してくれと懇願されたという逸話もあるくらいです。シリア支援イベントのような慈善活動、イベントとのコラボレーションを求められることもあるみたいです。

出典:バンクシー展
シリアへの支援イベントにて:シリアの平和をいのるシンボルの塔にライトでバンクシーの「赤い風船を持った少女」が映し出されているところ。

この「一線」に対するバランス感覚を考えると、彼は紛れもなく「天才」で、かつ「VANDAL」なのです

勇敢な行動力と社会への洞察、そして私たちを不快に傾きすぎないレベルで芸術を手立てに刺激してくれる人。公共物棄損を伴う活動をする自分勝手な不完全さをもってはいるが、とてもやさしい人間味と尽きない情熱を備えた人物。それが謎に満ちたバンクシーという人間像への私なりの解答です。

書いていて気づいたのですが。これって、人間っぽいなとおもいます。知性があり人情があり、不完全。しかし、これほど、自らの才能と社会の折り合いをつけ(?)自由に活動してる人が世界にどれほどいるのでしょうか。めちゃくちゃ楽しいはずです。うらやましい。

以上長々とお付き合いありがとうございました。

p.s

2020年7月30日18:00時現在 投票結果は

「天才63%、反逆者37%」(バンクシー展公式サイトより引用:https://banksyexhibition.jp/

となっています。

「バンクシー展 天才か反逆者か」

[期間]2020年3/15(日)~9/27(日)                           

  10:00~20:30(最終入場20:00)*会期中無休

[会場]アソビル

[主催]BANKSY~GENIUS OR VANDAL?~政策委員会

[後援]tvk(テレビ神奈川)、日本放送、J-WAVE、FMヨコハマ

[企画制作]IQ ART MANAGEMENT CORP

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