「ヴァン・ダイクとイギリス肖像画」と「スペイン絵画の発見」編
@東京西洋美術館
こんにちは、matsumoto takuya です。今回も「ロンドン ナショナル ギャラリー」展についてとりあげます。
ロンドンナショナルギャラリーは、世界の美術史が詰め込まれたギャラリーです。そのギャラリーが日本に来ていることは本当に幸運なことだと思います。
この展覧会は内容が豊富ですので展示セクションごと(今回は二つのセクション)に書いてくスタイルをとっています。この回では「ヴァン・ダイクとイギリス肖像画」と「スペイン絵画の発見」について取り上げていきます。
目次
アンソニー・ヴァン・ダイクと上流階級の肖像画
当展覧会のセクション「ヴァン・ダイクとイギリス肖像画」では、イングランド上流階級のなかで発展した気品ある美しい肖像画の名作を目にすることができます。ヴァン・ダイクはゴシック期の画家でイングランドの上流階級の肖像画の模範を打ち立てた画家で、イングランドの肖像画は彼を手本に発展していったそうです。
優雅さ格式、高尚さといったいものが感じとれるのが共通した印象でした。上流階級の肖像画がどういう意味合いをもって求められていたのかという点がみてとれます。
ここで、イギリスの肖像画が流行した経緯をすこし紹介します。イングランドは古くからある伝統的な国で、島国とうこともあり、保守的な階級意識がとても強かったそうです。この時代、産業が発展し、新興階級が台頭してきました。彼らが既存の上流階級に入っていくにためには、資産だけではダメでした。上流階級に入りたい彼らがとった手段が「肖像画」です。
なぜでしょうか。肖像画は絵画であり芸術です。芸術にはいいもわるいも教養や伝統、高貴といったイメージがあり、また、上流階級の社交の場といったイメージついています。また、高貴なドレス・コードを纏った人物に対して、その人を知らなくてもそういうイメージをもちます。かれらは、自らの肖像画を見た人が、肖像画から得られる上流階級のイメージで自分たちを見ることを期待して自らの肖像画を画家に描かせたわけです。ヴァン・ダイクはその期待を実に見事に表現した完成させた画家だったわけです。
イメージの利用という点で、いまでいう企業の広告や「ファッション」に似ているとおもいます。
上流階級の肖像画とファッション
では「ファッション」とは一体何なのかとう疑問がうかびます。わたしは以前、東京オペラシティーギャラリーで開かれている「ドレス・コード 着るものたちのゲーム」展でファッションについての一つの答えを得ました。ファッションとは「どう見られたいか」という願望を実現する手段だということです。わたしたちは、身に着けているファッションによって逃れられずイメージを持つ存在なのだということを実感させられる興味深い展覧会でした。
「ドレス・コード 着るものたちのゲーム」展についての記事はこちら(会期は2020年7月4日[土] ― 8月30日[日)です)
この上流階級の肖像画は、「人にどう見られたいのか」という願望を実現するための手段として利用している点で「ファッション」と共通したものがあると考えられます。展示されている肖像画は、優雅かつ格式といったな優雅なイメージが際立つように表現したときの一つの極みなのかもしれません。
しかし、同時にどこかドライな印象をうけました。
イギリス肖像画とスペイン絵画
「スペイン絵画」はこの意味でイギリス肖像画との違いを楽しむことができるセクションでした。スペイん絵画の絵には、人間の生の部分がとてもよく感じられたからです。バルトロメ・エステバン・ムリーリョの『幼い洗礼者聖ヨハネと子羊』『窓枠に乗り出した農民の少年』をみると、描かれた人物から生気のようなものが漂ってくるかのようでした。イギリス肖像画とは対照的です。
そのほかにもよくよく見ていると、スペインとイギリスの違いがあることが分かってきます。例えば目の大きさ、や色彩に違いがあります。地理的にイスラム文化に近接している点、同じキリスト教でもカトリックとプロテスタントの違いといったものが絵の中に見出すことができる。この二つの展示セクションはそういった違いを比較して楽しむのも面白いかもしれません。
以上、「ロンドン ナショナル ギャラリー展~肖像画とファッション~」でした。おつきあいありがとうございました。
「ロンドン ナショナル ギャラリー~オランダ絵画と黒歴史~」も書いています。よかったらこちらへ
「ロンドン・ナショナル・ギャラリー 展」
[会場]国立西洋美術館
[会期]2020年6月18日(木)〜10月18日(日)
[開館時間
[]]午前9時30分~午後5時30分
(金曜日、土曜日は午後9時まで)
※入館は閉館の30分前まで*事前予約制
[休館日]月曜日、9月23日
※ただし、9月21日は開館
[主催]
国立西洋美術館、ロンドン・ナショナル・ギャラリー、読売新聞社、日本テレビ放送網
[特別協賛]CANON、大和証券グループ
[協賛]CAO,損保ジャパン、DNP大日本印刷、TOYOYA,MITSUI&CO
[協力]大塚国際美術館、日本航空、ブリティッシュ・カウンシル、西洋美術振興財団