@三種美術館
こんにちは、matsumoto takuya です。今回は三種美術館で開催されている「竹内栖鳳≪班猫≫アニマルパラダイス 」展にいってきました。
竹内栖鳳は近代の京都画壇を牽引した日本画家で、動物に対しての愛情が深く、多くの動物の名画を残しています。中でも、1924年(大正13年)に作成された『班猫』は、かれの代表作で重要文財にも指定されています。
今回、その代表作『班猫』が約4年ぶりに特別公開されており、さらには竹内栖鳳の動物画17点が公開されています。また、彼に学んだ、西村五雲、西山翠しょうをはじめ、上村松篁ら京都画壇を代表する画家たち、小林古径ら東京画壇を代表する画家たちによる生き生きとしたときにユーモアある動物画が一堂に展示されています。
画家が動物をどのような眼差しで眺め、その心に訪れたイメージと絵画表現とどのように関係づけているのかといったことが感じ取れる、優しく奥深い展覧会でした。動物好きにはとくにおすすめの展覧会だと思います。
名作が連なる展示の中で、竹内栖鳳の『班猫』は正直別格でした。その気品、「生「」を感じさせるエネルギー、神秘性、シンプルさといったものが描かれた一匹の猫からはっきりと感じ取れるから不思議です。もし世界の古典と呼ばれる絵画と並列展示することが仮にあっとしても、この一枚はけっして引けを取らないと思います。
いったいどうして人はこんな絵が描けるのだろう、という素朴な疑問をここでは、少し掘り下げていこうと思います。
以下、展覧会の内容を一部含みます。
目次
動物画家の眼差し
竹内栖鳳の『班猫』の内容に踏み込む前に、まず、鳥の絵を得意とする京都画壇の上村松篁の言葉に注目したいと思います。展示会では彼の代表作とともに彼の言葉が紹介されていました。ざっくりとこんな感じでした。「鳥の顔にも人相のようなものがある、それは観る人の眼差しであり、その人の心のありようでもある。わたしは人相の良い鳥を描きたい。」彼の描く鳥の描き方は写実的です。しかし鳥嫌いのひとが怖がる「鳥目」が放つ非情さといったものはあまり感じられず、むしろ親しみを感じました。これは、彼が「人相の良い鳥」をモデルにして描いているからだといえます。鳥に人相を見出す眼差しによってえらばれた「人相の良い鳥」だったから、かれの絵に描かれる鳥の絵は愛されたのではないか。いいかえれば、動物の顔の中にさえ「人相」のような繊細な違いを見分けることができる画家の心の豊かさと、いいと感じさせる「人相」をもった動物の出会いが、絵を名画にさせる前提だと考えられるのです。いいモデルを見出すことこれがわたしが言いたいことです。
しかし、いいモデルなんて早々に出合うものではありません。それに、注意を払ってみていないと動物の「人相」の違い見落としてしまうはずです。このいいモデルを見出す条件があるのではないか。
動物への愛
わたしは、当たり前だと思いますが動物への愛だと考えます。人相がいい動物だけでなく動物好きは基本的に「人相の良しあし」に関わらず動物であるだけで精力的に見てしまいます。そして、「人相」のいいとはいえない動物をたくさん観察していきます。これがおそらく「いい人相」の動物て出会う準備となっているのです。なぜなら、たくさんのパットしない、「人相」をみつづけていくので、「いい人相」の動物と出会ったとき、その高低差を意識できるので「いい人相」とであったことが分かるからです。この準備は、動物への愛がないとできないことです。少なくとも動物表現で名作を想像するにはこの動物への愛が不可欠だということです。
ここで話を、竹内栖鳳の『班猫』に移します。
名作は奇跡的な条件のうちに
『班猫』のモデルとなった猫と竹内栖鳳は静岡県の沼津で偶然出会ったそうです。その時彼ははっきりとその猫の「人相」の良さに気が付いたとあたしは思います。愛する動物の中で、最高の「人相」をもった猫にであった動物表現者が、その猫を丹念に観察し、写生し作品に並々なぬ集中をもって制作に取り組むであろうことは容易に想像できることです。『班猫』は、画家の先天的な感受性、愛、そして技術的な後天的な努力、さらには運命が一致した奇跡的な条件の中で描かれたということです。
今回はこうのような視点で『班猫』をみていきましたが、名画とは奇跡的な人智を超えた条件によって描かれているのかもしれません。そう考えれば、絵画の言葉では表し切れない魅力が宿るのも不思議ではないと私は思います。
以上「なぜ『班猫』はこうも魅力的なのか「」についての考察でした。お付き合いありがとうございました。
「竹内栖鳳≪班猫≫アニマルパラダイス 」展
[会場]三種美術館
[会期] 2020年9月19日(土)〜11月15日(日)
(状況により変更する場合があります)
[時間]午前11時〜午後4時 (入館は午後3時30分まで)
[主催]山種美術館、日本経済新聞社