桜 さくら SAKURA 2020 展

―美術館でお花見!-

@山種美術館

こんにちは、matsumoto takuya です。今回は渋谷区広尾の山種美術館で開催中の「桜 さくら SAKURA 2020 」展をとりあげます。

三種美術館エントランス風景
山種美術館入り口風景

なぜ夏真っ盛りのこの時期に桜をテーマにした展覧会をやっているのか、というのには訳があります。本来は2020年に開催される予定であった、東京オリンピック・パラリンピックに合わせて外国の人に日本の文化を発信するという意味で日本象徴する花である桜を描いた絵画の特別展を企画していたところ、新型コロナ・ウィルスの影響で東京オリンピック・パラリンピックが延期となり、この特別展だけが取り残された形になったという経緯があるようです。ちなみに山種美術館は日本画がメインの美術館です。

結論から言うと、展覧会の内容としては十分楽しめる内容でした。むしろコロナ渦のいまだからこそ、わたしたちの先人が日本に生まれ美をその中でどのように表現してきたかということに向き合いやすかったです

桜 さくら SAKURA 2020 展公式サイト

日本の気候風土を表現する一つの完成形

奥田元宋が1987年に描いた『奥入瀬(春)』を見たとき私はそう思いました。この絵に対面して眺めていると、心がすっと落ち着ついて、展示空間そのものが避暑地のようなさわやかな清涼感の中に包まれた感じでした。何より、ああ日本だなと感じます。行ったことのない青森県の奥入瀬渓流がまるで知っている場所のように感じられたのも不思議でした。日本の少し湿った気候風土、密生する陰樹と渓流のさわやかな表情これらが織りなす風景が生きるように進化してきたのが日本画という技法なのかなと思いました。

印象と日本人の繊細な美意識と自然信仰

作品を見ていると、日本画は印象をとても大切にしているものなのだと驚かされます。濃淡のうち淡いの表現や余白の活用が豊かで、ここまで繊細に表現するものは西洋画ではあまり多くはないと思います。もののあわれ、移り変わりゆくはかなさゆえの美しさそういったものの表現の試みや、日本人の中に宿る繊細な美意識が見て取れます。

同時に写実という要素に重きがおかれている。この点はもしかしたら日本の万物に神が宿る信仰心であるアニミズムと関係があるのかなと思います。絵画表現のなかで写実は自由な表現とは対極にあるものだとわたしは思います。幾分、今の現代アートが許される表現範囲のなかで、狭く真面目で堅苦しい。

しかしアニミズムとの関係性からみたときには、写実表現で目の前にある世界をあるがままに表現しようと努めることは、目の前に広がる自然をあるがままに肯定しているからではないか、とふとこの展覧会をみていて思いました。

外国時への文化発信が目的であるがために、この展覧会には日本の精神性、美意識、そして日本画の名画が集約されています。コロナ渦のなかで、自分の国について目がとまりやすい今こそ、こういう展覧会にあしを運ぶことで、日本の名画との意外な出会いや発見、気づきへ開かれるかもしれません。

以上、「桜 さくら SAKURA 2020 展」についてでした。おつきあいありがとうございました。

「桜 さくら SAKURA 2020 」展

[会場]山種美術館

[主催]山種美術館。朝日新聞

[開館時間]午前11時〜午後4時 (入館は午後3時30分まで)

[会期]2020年7月18日(土)〜9月13日(日)(状況により変更する場合があります)

[休館日]毎週月曜日(祝日は開館、翌日火曜日は休館

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