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cinema review
こんにちはmatsumoto takuyaです。今回は、伝説のファッションブランド「ピエール・カルダン」を生んだ、巨匠ピエール・カルダンを、彼のドキュメンタリー映画『ライフ・イズ・カラフル!!』を手掛かりにとりあげていきます。
映画『ライフ・イズ・カラフル』公式サイト
ピエール・カルダンはファッション界で一帝国を築き上げた人物です。当時のフランスのファッション業界はとても狭い世界で、新鋭デザイナーのブランドが既存の会社のブランドと肩を並べることは難しい状況でした。そんな状況下で、個性的な想像力と類まれなる行動力で今の地位を開拓しながら築いったのがピエール・カルダンという男です。それに加えて、かれは何かの後ろ盾によって成功していったタイプではなく、自分の力でやりたいことを社会に沿って実現していった稀有な人物でもあります。
今の日本で何かしら、「壁」を破りたいと思っている人にとっては、彼を知ることは何かしらの「行動」するための嬉しい発見があるかもしれません。そんな謎に満ちたピエール。カルダンを彼の映画『ライフ・イズ・カラフル!』を手掛かりに少し深堀していきたいと思います。
以下内容を含みます。
協同の場を生み出す情熱
彼の想像性や行動力は既存の方法を変えることでファッション界の反発を招くこともあったそうです。それでも彼は、仕立て屋での修業時代をはじめ、ディオールで仕事をし、自らのブランドを立ち上げ仕事をしてきました。彼が映画で「ピエール・カルダンはデザイナーの名前であって私一人ではない、多くの人と一緒に仕事して成り立ってる」ようなことを言っていましが、彼は決して孤立していたわけでなく、多くの人と仕事をやってこれたし、むしろ多くの人と仕事をうまくやってこれたから成功したのです。
彼のような、若くして自分の意見を上司にはっきり言う人物、旧陣営が慣れ親しんできた方法から有効だとしても未知な方法に変えようとする若手がいたら、日本ではどんな反応が返ってくるでしょうか。かなりの生意気な奴、面倒を持ってくる奴とやっかまれるでしょう。おそらく彼が仕事したフランスでも同じようなことはあったと思います。しかし、大きな違いは、彼が衣服に対して情熱があり、同じようにパリのファッション業界で働く人もファッショに情熱があったという点です。
カルダンはあくまで、ファッションへの情熱から既存のものに捕らわれない柔軟なアクションをしていきます。その上司や同僚、もしくは提携者もファッションについて情熱があるので、個人的に彼が気に入らなくても感情に支配されないでいられたのだと考えられるのです。同じものを愛し、そのために仕事をしていることか生まれる連帯意識が彼の仕事の成功の大元の要因だったのではないでしょうか。
個人として生きることは、集団で働くことを一概に妨げるわけでなく、むしろ個人から生まれる愛情によって連帯でき、他者と協働でき、社会と結びつくことができるわけです。
仕事と労働
この映画『ライフ・イズ・カラフル』を観ていて思うのが仕事という言葉には質的に二つの意味があるのだということです。96歳のカルダン(なんとまだ彼は現役です)はインタヴュアーに若さの秘訣を尋ねられ「仕事」と答えます。しかし「仕事」は必ず私たちの活力になるのでしょうか。まわりを見渡してみると一概にそうではないとわたしは思います。
「仕事」という言葉に彼込めている意味と、わたしたちが思っている「仕事」に込めている意味に質的な違いがあるように思えるのです。
特に情熱はなく言われた通りの内容をこなす、もしくはある程度は専門性があっても代替が可能な仕事は仕事というより「労働」に近いと思います。では「仕事」とはなんなのかというと、情熱があり何らかの創造を行なうことだと思います。もちろんこれは、認識を助けるための区別であり、現実は仕事という言葉の中に「仕事」と「労働」の両方の要素が混在していると思います。
ただ、少なくとも、働いている人が必ず全て彼のいう「仕事」をしているわけではないということです。
世界に情熱を見出した度合いで行動できる
総合芸術である舞台へのあこがれ情熱。これが彼をファッションへと導き、同じファッションを愛する人たちを引き付け、彼を導き、行動の原動力となっています。このからのうちから生まれる原動力が、かれの行動を支えています。このかれの「うち」から生まれる点ポイントです。
いやいや、私にはそんな愛するものなんてない、という人は多数派だと思います。その生活に特に不自由も違和感も感じていないならばそれは問題はないことです。ただ、虚しさをかんじたり、「壁」をやぶりたい人にとっては情熱が、世界についてなにがしかの喜びを見出すことがとても重要だと私は思います。なぜなら、世界にたいして見出した喜びの度合いで、その人は活躍できると思うからです。ピエール・カルダンはこの世界に対する喜びをしっかり見出せていたから、たとえまだ何も成し遂げていなくても(彼は裸一環で服飾業界にはいっていきます)、大きな失敗をしても(彼はいつも成功していたわけでななかったようです。)エネルギッシュに行動していくことができたのです。
必要な遠回りとしての「自分探し」
でも、いざわたしの好きなものって何なんだろうと、立ち止まり向き合おうとしてもおそらくうまくいきません。いままでそういう内省的な能力を十分使ってこなかったので、その能力がすっかり退行してしまっているからです。それにくわえて「自分探し」といわれるものは、模範解答がないので、マネするわけもいかずすぐに答えでません。
それでも、ピエール・カルダンがしてきたように「行動」できるかどうかが重要だと思います。たとえ、愛する対象がこれだとすぐに見つからなくても、自分の心にチューニングを合わせながら、アンテナをはって生活することは、すでに主体的なの能力を使っています。能力は使うと必ず発達していくものですのでそのうち見つかると思います。
人生を「カラフル」に
この映画のタイトル「ライフ・イズ・カラフル」に戻ってまとめたいと思います。人生に彩を与えるものは、心です。それは結果として成功から得られるのにではなく、自らの心が生きるように選択してきた行為の過程に生まれるものです。それは行為の過程の中にあります。
彼から学べることは、自らの心から生まれる(喜び)愛に沿って勇気をもって社会で行為していくことで人生に彩が添えられるということだといえるかもしれません。
以上、ピエール・カルダン 『ライフ・イズ・カラフル』レビューでした。お付き合いありがとうございました。
「ライフ・イズ・カラフル!未来をデザインする男ピエール・カルダン」
監督:p.デビット・エバーソール&トッド・ヒューズ
2019/アメリカ/フランス・101分
現代:『HOUSE OF CARDIN』
翻訳:古田 由紀子
後援:在日フランス大使館