月岡芳年(前期)展

~血と妖艶~

@太田記念美術館

こんにちわ、 matsumoto takuya です。今回は太田記念美術館で開催されている「月岡芳年 血と妖艶」展をとりあげていきます。

 タイトルに「血と妖艶」と冠されているにふさわしい、人間のもつ一つの側面である闇がもつ魅力が凝縮されている展覧会です。蒸し暑い猛暑真っただ中の今、ひやりとさせてくれるこの展覧会はこれ以上ベストなタイミングはないかもしれません。太田記念美術館は浮世絵をメインの展示に据えている美術館で、今回の展覧会の主役「月岡芳年」も歌川国芳に師事し、幕末から明治初期にかけて活躍した浮世絵師です。

なお、「月岡芳年 血と妖艶」展は前期と後期に分かれていて、展示作品が変わります今回は前期の展覧会についてとりあげます。

月岡芳年(前期)展公式サイト

浮世絵というと、どこか同じような印象を受けますが、彼の作品からは、ある種の彼らしさ、個のようなものが感じ取れました。「血と妖艶」という内容への好奇心をぬきにしても、一味違った浮世絵といった印象です。

では、この違はどこにあるのでしょうか。

「浮世絵」にリアル感をもたせること

彼の作品をみていくと、従来の浮世絵より人物がリアルに描かれているように映りました。そのリアルさが妄想、狂気そして闇ととてもよく調和しているのです。彼はひとみの中に灰色の色彩を導入したり、人物がの瞼をリアルな二重にしたりと従来の浮世絵の「型」から離れ、写実的に描こうとする試みをしていたみたいです。写実を当時の時勢に合わせてデフォルメを洗練させっていったものが浮世絵です。彼は浮世絵の世界観に写実を再びとりいれることで一つ上の高みを目指していたようです。

印象として、浮世絵の型で、部分的にリアルさを導入していった彼の描く人物は、少し不気味な印象をうけます。目は口ほどものをいうということわざにあるといいますが、快活な印象に怪しげな印象にもおなじくらい主張力があるのです。

浮世絵 × リアル = 血と妖艶

では、この不気味さは、一概にダメだとはいいきれません。ある種の対象を描くときにはむしろ有効に作用します。それが「血や妖艶」といった人間の持つ闇・狂気の側面です。新聞という新しい娯楽が生まれ奇譚集の需要が高かったとはいえ、彼が浮世絵をリアリズムの方向に発展させたことと、グロテスクな内容を得意にしたことは偶然ではなかったようにわたしには思われます。浮世絵という表現の型の中で偉大な先人がすでに表現をし尽くし、しかも武士の時代が幕を引いた激動の期間が彼が活躍した時代です。時代が大きく変化するなかで、浮世絵もこうやって変化していった一致は興味深いことです。

ダークアート中のダークアートが成立したこの時代の空気感、興奮と期待と不安がごちゃ混ぜの空気感はいったいどういうものだったのでしょうか。今現在、世界は新型コロナウイルスの出現により生活様式が従来のものから変わろうとしています。もしかしたら現代アートも大胆な変化が生まれるかもしてないですね。

現代アートのさきがけ

『義経記五条橋之図』には弁慶の動きが荒い荒しく太い簡略された線で描かれていました。これが、絵に迫力と臨場感を持たせている。表現としてはどこか、現代アートに通じるものがあり、こういう表現を浮世絵で見られることも月岡芳年の良さだと思います。

以上、「月岡芳年 血と妖艶」展についてでした。おつきあいありがとうございました。

「月岡芳年 血と妖艶」展

[会場]太田記念美術館

[会期]2020年8月1日(土)~10月4日(日)前期 8月1日(土)~8月30日(日)後期 9月4日(金)~10月4日(日)※前後期で全点展示替え8月3、11、17、24、31、9月1~3、7、14、23、28日は休館

[開館時間]

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