STARS展:現代美術のスターたち

―日本から世界へ

@森美術館 

こんにちは、matsumoto takuya です。今回は六本木ヒルズにある森美術館で開催されている「STARS展:現代美術のスターたち―日本から世界へ」展をとりあげます。

この展覧会では現代美術界で世界的に活躍している6名の日本人アーティストを取り上げています。

エキセントリックな村上隆から始まり、悟りを体現したかのような李禹煥(り・うふぁん)、目に焼き付くような強烈な印象の草間彌生、ひとの心とデジタルが幻想的に共同する宮島達男、三つ子の魂百までを体現したような愛らしい天邪鬼な世界観の奈良美智、古今東西の美を知的にそして優雅に表現する杉本博司。

世界的に活躍している作家ともなると、世界観がこれでもかというほどはっきり確立されているということ驚かされます。ひとたび別の芸術家の展示ルームに映れば、も文字通りの「別世界」が広がっていたのです。

また現在に至るまでの現代美術界において、欧米で日本人芸術家がどうみられていたのか、いるのかということを紹介する文献資料コーナーまで用意されており、内容の濃い展覧会でした。

左:入口展示風景 中央:李禹煥展示室風景 右:奈良美智展示室風景

わたしの正直な感想を正直にいうと、現代芸術わ時々よくわからなくなるというのが本音です。その分からない点が、作品を彼らの思想と外からの彼らの評価とを照らし合わせる形で少しだけわかる部分がでてきたのかなと感じます。

これから、わからない点について今回の展覧会にいくことで分かりかけてきた点を言葉にしてみようというのが今回の試みです。

以下、内容を含みます。

「STARS展:現代美術のスターたち―日本から世界へ」公式サイト

意見を総意というかたちで語ること

わたしは、村上隆さんの作品、について今回まともに対面したのですが、それまでテレビ等で彼の作品を見た時に、かなりもやもやしました。そのとき紹介されていた「スーパーフラット」というテーマの中の作品は特に見る側の視点(特にあきらかに卑猥な一線をこえていることへの配慮)が感じられず、そのまま発表しているよう感じられたからです。しかも芸術というより二次元のアダルトショップにあるような感じで、かといってユーモアともとりがたい。なぜこの「スーパーフラット」がこれほどまでに現代芸術の世界で受けているのだろうかとピンとこなかったのです。

そんな中わたしが感じていたもやもやの正体の一部が、彼の作品の「スーパーフラット」の内容というよりは、彼の考え方を表明する言い方にあること気づきました。

展示付属の解説によると、彼はバブル期に出現したオタク文化を擁護する形で、本来日本人は浮世絵に見られるように数奇なものを好む傾向を持つ民族であり「オタク」はその系譜を継いだ日本の誇れる「文化」なのだという考えだそうです。同時に、日本の「オタク文化」にたいして特に芸術の盛んな欧米から、「内容がなく、子供向け、技術もない」よいうような低評価に反感を感じていたそうです。この日本人の「オタク「」文化ついての欧米人からの見下した態度によって日本人が委縮しないでいられるように、との思いで、あえて彼らからの言葉を要約した「スーパーフラット」という内容を厚顔無恥という批判を承知で欧米の芸術界に挑んだという経緯があったそうす。わたしの「スーパーフラット」への感想は、彼の意図したことの一つだったのです。

この既成概念への挑戦という兼ね合いのなかで、揺さぶりをかけたことが評価されているようでした。

STARS展:村上隆 評価 より一部抜粋

わたしは、かれの好みやかれの挑戦にたいして否定しているわけではありません。わたしが、ひっかかる点は、まるで彼の「スーパーフラット」で行われている彼の主張が、彼の個人的な芸術への価値観でなくて、わたしたち「日本人」の価値観であり、日本人を代表として欧米へ異議申し立てをしていた(いる)という点です。

この個人的な意見を日本人の総意として語る点によって、他にも「私」の思いや考えを持つ人がいるということ無視してしまっている感じ。それがわたしのもやもやの正体なのでした。

ところで、わたしはカナダに2か月ほど語学留学したことがあります。その時のクラスメートの韓国の大学生が「せっかくカナダまできて英語を勉強しにきたのに、ホームステイ先で日本のアニメばかりみている」と笑って話していました。あるドバイ人は、ドラゴンボールのベジータというキャラクターの良さを永遠と語ってきました。これほどまでに日本のアニメーションが世界の特に若者の中で受け入れられていることに驚いたのです。

わたしは成長するにつれて、漫画やアニメよりほかの表現方法に興味が移っていったのですが、この時のエピソードはなんだか嬉しい気持ちになったことを覚えています。

注)彼の著書も読んだわけではありません。あくまで、彼の作品と展示の解説からそうなんとなく感じたのだということを添えておきます。

対照的な表現と思想

この展覧会は村上隆ではじまり、杉本博司でおわります。このキュレーションが興味深いのはこの両者の表現にみられる違いです。前者がこれでもかというほど目に付く色合いとフォルムで単純化する表現なのに対して、後者はあくまで自然な色調との調和の中で表現です。現代芸術が扱える対象範囲のは広大さがよくわかります。

ここで少し杉本博司について。彼の映像は、映像のなかに息をのむ美しさちりばめられていました。そこには日本的な美に限定することなく、また、欧米かぶれになることなく、かれの世界への興味の広大さと深さが彼の美意識に集約されているような作品で、とにかく目が外の世界に開かれている風通しのよさみたいなものを感じました。

このようなわけで、もやもやのの正体は、意外となところにあったのでした。わたしはもやもやとは、一概に悪いものだとは思いません。わからないから興味がわくからです。わかりやすい、シンプル、簡単というのような内容は悪くないのですが、最近はそちらのタイプばかりが見受けられるので、噛み応えのある何かを探している人がいるならこの「STARS展」はおすすめかもしれません。

以上長々と、おつきあいありがとうございました。

「STARS展:現代美術のスターたち―日本から世界へ」

主催森美術館
協賛モルガン・スタンレー
鹿島建設株式会社
株式会社大林組
日本MGMリゾーツ
楽天株式会社
SENSAI
ソニー株式会社
株式会社竹中工務店
株式会社きんでん
Morgan Stanley
大林組
MGU RISORTS
Racten
SENSAI
SONY
TAKENAKA
Kinden
協力日本航空
制作協力デルタ電子株式会社
東芝ライテック株式会社
個人協賛Nelson Leong
企画片岡真実(森美術館館長)
近藤健一(森美術館キュレーター)
椿 玲子(森美術館キュレーター)
德山拓一(森美術館アソシエイト・キュレーター)
熊倉晴子(森美術館アシスタント・キュレーター)
矢作 学(森美術館アシスタント・キュレーター)

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